第6話 クリスティーヌの「森ビル!万才」 森ビルマンション購入記2【Weekendクリスティーヌ 】

「食いしん坊!万才」にちなんで、「森ビル」のマンションを購入し、居住したクリスティーヌが、「虎ノ門・麻布台プロジェクト」で注目を集める「森ビル」を礼賛する記事の続き、第2弾です。

初回の話は、こちらです。

森ビルマンション購入記2

初めて売主に会う

契約が済み、「決済日」がやってきました。

指定されたお部屋に入ると、仕立てのよさそうなオリーブ色のウールジャケットを着こなした、スポーツマンらしい年配の男性が立ち上がりました。

「あ、この方が売主なのだな」とわかりました。肌は日に焼けている、というほどではないのですが、ひきしまった頬が、若々しい印象でした。

クリスティーヌはというと、いつものユニクロの白いパンツ姿で、その頃いちばん気に入っていたモスグリーンの上着を羽織っていました。下はVネックの薄手のセーターで、その朝クローゼットを開いてたまたま目についた、小さなエトロのスカーフを首に結んでいました。

余談ですが、こういうとき、何を着ていけばいいのか、ちょこっと迷ってしまいます。・・・あまり気張って、はりきってお洒落しました、という感じになるのもイヤですし、相手に失礼にもなりたくない。

理想としては、「基本はいつもの格好だけれど、小物はちょっぴり良いものをあわせる」感じでしょうか・・・。そこで、ハンドバックだけは、いつもは開けない棚からひっぱり出してきました。といっても、クリスティーヌが持っているものなど、これといって「よそゆき」はないんですが。(笑)

手付金を支払い、契約書にハンコを押したときは、売主と買主が顔を合わせることはありませんでした。契約書に署名するのは別々の日に、仲介不動産会社で行なったからです。

そのため、売主の方がどんな方なのかはわからず、特に詳しいことを営業マンから聞いていたわけでもありません。初めて顔をあわせたのが、決済日であるこの日だったのです。

仲介の不動産屋さんのほかに、司法書士の方も同席していました。夫と2人の名義でしたが、夫は仕事があったため、この日はひとりで臨みました。そのため、この決済日の前日に、司法書士が夫に面談しており、夫が司法書士に委任状と、2人の住民票と印鑑証明書を渡していました。

なので、この日の持ち物は、2人分の実印、銀行の通帳と印鑑、身分証明書(運転免許証)だけでした。

これまでのいろいろな準備が、いよいよ結果として形になる「決済日」。司法書士に提出する書類などに署名し、ハンコを押しました。間違えると取り返しがつかないので(まあ、実際は間違えても二重線で消して、訂正のハンコを押せばいいわけなのでまったく取り返しがつくわけですが)、住所や名前を書くといった単純作業にミスがないように、それなりに集中しました。

あたりは、やけに静かでした。

あまり詮索してはいけないかな、と思い、最初に挨拶をして以降、売主の方には、こちらからは話しかけずにいました。

僕は事情があって手放すんですが

売主の方が口を開きました。

「僕は事情があって手放すんですが」

あ、はい。

事情って・・・? もともと好奇心が旺盛なクリスティーヌですが、こんなとき、好奇心を抑えるようにしています。できるだけ失礼にならないように、売主を見つめました。

「この先、わたしと同じように、あなたがたも、あの部屋を売ることになるかもしれません。人生は何が起こるかわからないですから、そんなに長いこと、あそこには住まないかもしれません。でも、人生の一時期、あの部屋に住むことは、きっとあなたがたの人生を、豊かにしてくれることでしょう」

気取ったところはみじんもない、てらいのない声音でした。

「あの部屋に、若いうちに住めるあなたがたが、うらやましいです。僕も、もっと若いうちにあそこに住めたら、人生が、もっと広がっていたかもしれない」

まぶしい気持ちで、はい、と、口にするのがやっとでした。

人生の真実が込められた言葉だなあと思いながら、まさか売主の方から、こんなすばらしい「結婚式の来賓のスピーチ」レベルのお話を伺うことになるなんて、と心の底から、嬉しく、ありがたく、うなづきながら聞いていました。

売買、それも決済日という、いわば金銭のやりとりの場で、こんな温かな言葉をかけてくださるとは、想像もしていませんでした。かしこまって「拝聴」しているこちらの気持ちをほぐすように、売主の方は、笑いかけてくれました。その笑顔が、こよなくチャーミングでした。

この方も、これまでの長い人生、いろいろなことがあったのだろうなあ、あの部屋を購入し、人生の一時期をそこで過ごして、今、手放すそうとしている・・・などと、メランコリックに想像をふくらませてはみたものの、「事情」については聞きませんでした。

その代わり、いつか自分が、その部屋を売ることになる日を夢想しました。

決断できてよかった、前に進めてよかった、と心の中で繰り返しました。

そんな売主と買主の間に立って、仲介の営業マンは、(クリスティーヌの目には)誇らしげに見えました。

鍵は「所有の象徴」

それからは事務的なやりとりとなり、営業マンの方と一緒に銀行へ行きました。

事前に、売買代金の残金、精算金(固定資産税、都市計画税、管理費、修繕積立金ですでに売主が支払い済みで清算する必要があるもの) 、仲介手数料、登記費用の額については書面でいただいていたため、それに沿って、窓口でお金を売主の口座へ振り込み、仲介手数料と、司法書士に支払う登記費用については、現金で引き出しました。

そうして、再びお部屋に戻りました。

その後はほとんどたいした話はせず、挨拶をして、ほかの皆さんより先に、その場を去ることになりました。

売主の方は、さっき見せてくれたのと同じチャーミングな笑みで、送り出してくれました。それは、人生経験豊富な人だけが持ち合わせることのできる、丁寧なたたずまいでありながらも、人をほっとさせる笑みでした。

売主の方と会うのは、この日が最初で、最後でした。

いつか、わたしたちが誰かに部屋を売るときに、あんな風に、すてきな言葉を相手に贈れる人になっているだろうか。

表面的ではなく、実体のともなった、気取りのない言葉を、あの売主の方のように、相手に伝えられるだろうか。

・・・そんなことを考えながら、高揚した気分で、エレベーターを降りました。

1階に着き、ビルを出て、歩道に立つと、車のクラクションが、耳に飛び込んできました。それまでの静寂から打って変わって、 周囲の音が押し寄せてきました。

さあて、どっちの道から帰ろうかな。

いや、「どっちに帰ろう」かな。

「今までの家」と「これからの家」、一時的ではありますが、帰る家がふたつになりました。

バックの中には、「森ビルマンション」の鍵。残金を支払って、その代わりに鍵をもらう。鍵は「所有の象徴」でした。

・・・引っ越し魔と人には言われるクリスティーヌですが、新しいところに引っ越すとき、毎回、最初の夜は、落ち着きません。引っ越す前は、「ここに住もう」とすぐ心が決まるのに、いざ、引っ越したその最初の日、見知らぬ街に自分がいることに、やっぱり慣れないのです。

ひとりだったせいか、突然に、心細くなりました。

大きな決断。後戻りできない決断。泣いても笑っても、ひっくり返すことはもうできない。

「今、全部終わった。鍵も、もらった。やったね!終わったね!よかったね!」

立ち止まって携帯で彼に電話し、わざと明るい声を出して、報告しました。

もうお昼。何か、食べていこうかな。そういえば、お腹が空いていました。

でも、どこで食べたらいいかしら。

こんなとき、美味しいお店を見つけるまで歩き回ってしまうクリスティーヌです。ふだんはあまり来ないエリアだったため、美味しそうなランチの店を探して回りました。

ちょうど和食のお店の前で、「チキン南蛮」という文字が目に飛び込んできました。好物のチキン南蛮(どっさりかかったタルタルソースと甘酸っぱいタレがいいコンビネーション!)を、大口開けて無心で食べ進め、お腹いっぱいになると、さっきの心細さは消えていました。

やっぱりここは、「森ビルマンション」に直行するしかないよね。

行こう、「森ビルマンション」に。

クリスティーヌの想い(と、おまけの話)

マンションの売買の時に、売主の方と会う。・・・それは、(みんながみんな、というわけではないと思いますが)ちょっぴり緊張することでもあります。

たった数分、言葉を交わしただけですが、この日、「森ビルマンション」の売主の方からかけられた言葉を、折にふれて、思い出します。

クリスティーヌは、売主の方から、部屋とともに、「言葉」をいただきました。

クリスティーヌが「自分のモットー」としてスムラボの冒頭と最後に記している「住む場所は人生を豊かにする」というフレーズは、この時に会った「森ビルマンション」の売主の方の言葉が元になっています

そんな、クリスティーヌにとって大切な思い出を、皆さまとシェアさせていただけたことを感謝しています。

新築マンション情報を発信する「スムラボ」の書き手のひとりとして、力不足のところをフル回転させ、なんとか、みなさまの人生を豊かにするお手伝いができたら、と願っています。

・・・今日はここまでにいたします。また続きは来週に。次回3はこちらです。

ここまで読んでくださったお礼に、クリスティーヌが愛してやまない、京都の鯖寿司を紹介いたします。

「いづう」の鯖姿寿司です。

いづう
あ〜、こうして写真で見るだけでも、また食べたくなっちゃう! 京都に行った時に、京都駅にある「ジェイアール京都伊勢丹」の地下で買って、新幹線の中で食べました。(できれば祇園のお店に行き、店内で食べたほうがいいんですが。)

包み紙が季節によって変わります。この包み紙の紐を解くときが、また、わくわくするんですよね。

このときは冬の包み紙でした。いづう
お店のHPはこちら です。

「Weekendクリスティーヌ」は、クリスティーヌが不動産購入(売却)から感じたこと、日々の生活から発見したこと、失敗談から学んだこと、成長?したこと、などなど、機会あれば皆さまとシェアしたいと思っており、「だったら、週末がいいかなあ」と思った次第です。

あくまでクリスティーヌの体験談が中心になる予定であります。ちょっとした息抜きに、どうかおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。

この話の続きは、こちらです。

第8話 クリスティーヌの「森ビル!万才」 森ビルマンション購入記3【Weekendクリスティーヌ 】



・・・皆さまのウィークエンドが、素敵な時間でありますように。住む場所は人生を豊かにする、がモットーの、クリスティーヌより愛をこめて

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ABOUTこの記事をかいた人

東京生まれ、東京育ち、たまに海外。趣味は料理。保有不動産は、マンションや戸建のほか、賃貸用の店舗が1軒、駐車場が1箇所。一部友人や夫からは呆れ気味に「不動産屋さん」と呼ばれています(笑)。

[寄稿] マンションコミュニティ:スムラボ派出所スレ

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