仙台市の新築分譲マンションに係る市況リポート (其の弐: 総戸数と専有面積の動向を探りました。)【トミー】

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はじめに

  • 本稿は、宮城県仙台市において、2017年から2024年までに竣工された、もしくはその予定がある新築分譲マンションについて、総戸数や専有面積の観点から、それらの時代的変化の傾向を探ろうとするものであります。
 

1) 建物の規模 (総戸数)

1-1. 前置き

  • 前稿 では、2017年から2024年までの全ての供給物件を総戸数に応じて分類をし、その供給割合を示しました。
  • 今回のリポートでは、時代的変化の動向を捉えることに主眼がありますので、各年にて総戸数の平均値を算出しました。
 

1-2. 結果

  • 各年の全体平均値は、約102戸 / 棟となり、レンジが約80戸から約138戸でした。
 

1-3. 近年の動向

1-3-1. 大規模物件

  • 棟あたりの総戸数に関して、2017年までは、2002年竣工の大京による ライオンズタワー仙台広瀬 の421戸でした。
  • 2019年には、これが更新され、三井不動産と伊藤忠都市開発による パークタワーあすと長町 の468戸に塗り変わったのは記憶に新しいところです。
物件の紹介記事: 仙台市の中古マンションに着目したバーチャル街歩き (故きを温ねて新しきを知る)

物件の紹介記事: 長町エリア (仙台市南部圏の広域拠点) の歴史と分譲マンションの変遷

 

1-3-2. 小規模物件

  • 一方で、小規模物件 (最小戸数) については、小生の知るところでは、野村不動産により2004年と2006年に竣工を迎えたプラウド中島丁およびプラウド中島丁ディアージュの18戸です。
  • これについては、今回の対象期間中に記録が更新されることになく、2018年にタカラレーベンによる竣工となった レーベン仙台大和町 embrace の27戸が最小となりました。
 

1-3-3. その他

  • ところで、前稿では、小規模物件について、2017年以降の供給割合は、約15%であることを示しました。
  • 一方で、2000年頃から2016年までにおいては、どんぶり勘定の計算で恐縮ですが、近郊、郊外を問わず、その割合がおよそ40%程度にあるものと思われます。
  • また、階数に関して、中層階の竣工物件が圧倒的に多いのはどの年代も同じですが、低層階の竣工物件は、前記年代では肌感覚で約25%であり、2017年以降が約19%である事に比すると高い割合を示しました。
  • したがって、分譲マンションが根付いていなかった年代では、小規模戸数 and/or 低層階物件が2017年以降よりも高い割合で供給されていた事が分かり、個人的には興味深い事実であると考えています。
 

2) 専有面積

2-1. 前置き

  • 1棟毎に全住戸から専有面積の平均を求めるのが本来の在り方ですが、この作業を個人が遂行するのは、手間がかかり過ぎます。
  • この背景から、本稿では専有面積の定義の不正確さを承知の上で、最小面積と最大面積を用いて、その変化を読み取ることを試みました。
 

2-2. 最小面積

2-2-1. 一つ目の転換点

  • 2000年頃から2016年にかけては、分譲エリアを問わず、55m2を下回った物件は、数件のみであり、ほとんどが約60m2以上から約80m2のレンジに収まります。
  • と言うのも、2017年以前では、2008年の アップルタワーズ仙台 (34.35m2)、2013年の THE SENDAI TOWER 一番町レジデンス (44.0m2)、(ただし、2010年の ザ・レジデンス一番町 の賃貸119戸を除く) のように大規模な市街地再開発事業に関わるもの以外では、55m2を下回ることは極めて稀でした。
物件の紹介記事: 仙台市の中古分譲マンション事情 (中心部編)

 
  • 2017年以降では、中心市街地から近郊エリアにおいて、2017年に クレアホームズ一番町プレステージ が56.45m2、パークリュクス仙台 が33.29m2を供給し、その後、プラウド仙台錦町、プラウド勾当台公園、ル・サンクタワー仙台勾当台公園のように最低面積の狭小化 (60m2未満) をしながらも、最大面積を約85m2以上とする物件が増えてきたという特徴が見られ始めました。
  • したがって、中規模- and/or 中層の物件規模においても、このような戦略の物件 (コンパクトプランの採用) が出てきたのは、一つの転換点と言えるものと考えています。
 

2-2-2. 二つ目の転換点???

  • 中心市街地から近郊エリアでは、2021年に グランドロアール仙台西公園 、デュオヴェール仙台上杉 がホォール (whole) コンパクト物件として竣工され、これ以降、フージャースコーポレーションとタカラレーベンがリードしながら、類似物件の竣工が増えてきているところではあります。
  • しかしながら、現時点においては、これまでの流れが大きく変わり、ホォールコンパクト物件が主流になるほどの勢いを強く感じる程では無い印象です。
 
  • 近郊から郊外エリアにかけては、最低面積が50m2未満は竣工されていませんが、徐々に低下している傾向が感じ取れています。
 
  • 総括しますと、最低面積は、中心部から近郊では絞られつつありますが、近郊から郊外よりの物件に関しては、ファミリータイプを辛うじて維持していると言えます。
  • 今後は、インフレなどの社会背景と価格等との関連性を考慮して検証をしていく必要もあるでしょう。
 

2-3. 最大面積

  • 物件内の上位住戸として、100m2前後を供給する手法は、新築分譲マンションが活発になってくる2000年頃やそれ以前からも変わりがありません。
  • 2017年以降の各年における平均値の推移をみると、最大面積の推移には大きな変化が見られませんが、最小面積に比してやや標準偏差が大きく、各年で売主やその物件特性等に依存をしたばらつきが出ている傾向があるものと思われます (後図参照)。

( mean ± S.D.)


 

2-4. 最小面積と最大面積の平均値の推移

( mean ± S.D.)


 
  • 前図のエラーバーは、標準偏差を示しています。
  • 近年の傾向の特徴としては、平均値よりもこのエラーバーの長さに特徴が表れています。
  • 2017年から2020年にかけては、約80m2前後で推移をしていますが、標準偏差も小さくなっています。このことは、物件間に大きな偏りがないことを意味しています。
  • 対して、2021年から2024年では、標準偏差が大きくなり、物件間に振り幅が出てきたことを示するようになりました。このことは、面積に関する個性が物件間に表れ始めたことを明らかにしています。
  • これについては、この時期からホォールコンパクトマンションが出てきたことに起因する最大面積の狭小化、および最小面積の狭小化 (コンパクトプランの採用物件の増加) 等が考えられます。
 

3) コンパクトマンションとは

  • 近年、”コンパクトマンション”という言葉を頻繁に耳にするようになりました。いつ頃から、どのような概念 (定義) で浸透してきたのでしょうか。
  • suumoによれば、明確な定義はないものの、30-50m2程度の1DK-2LDK程度の間取りが中心のマンションを指すようです。
  • 仙台市に関して、最小面積が50m2を下回る物件の階層は、用途地域や景観重点区域における高さ制限 (解説記事) を受けない限りは、基本的には中層としている傾向にあるなど、前記に類する物件が必ずしも小規模戸数 and/or 低層という訳ではありません。
  • したがって、あくまで面積が基準と言うのは、妥当な解釈の一つであると言えるかもしれません。
 

おわりに

  • 先ほど日経平均CFDが一時的に34,000円をつけ、また、ユーロ円が154円後半を維持しており、つくづく相場は、よく分からいものだと驚いているところであります。
 

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