「食いしん坊!万才」にちなんで、「森ビル」のマンションを購入し、居住したクリスティーヌが、「虎ノ門・麻布台プロジェクト」で注目を集める「森ビル」を礼賛する記事の続き第3弾です。
初めてこちらにいらした方へ。本記事は連載のため、ぜひ最初からお読みください。目次
森ビルマンション購入記3
気まぐれなピアノの旋律
チキン南蛮パワーで、すっかり元気になり、心が定まりました。
行こう、「森ビルマンション」に。
途中でコーヒーでも買って「森ビルマンション」に行き、ゆっくりと、香りの一杯を味わってみたい。鍵を取り出し、ドアを開け、廊下を通り、リビングへ行き、景色のよいベランダに向かって立ち、温かいコーヒーを飲みながら、自分がどんな気持ちになるのか、たしかめてみたい。自分のものになった「森ビルマンション」への、初めての訪問。足を踏み入れたその瞬間、どんな心のシンフォニーが、押し寄せてくるのだろう。どんな充足感に、包まれることだろう。そしてこれから、どんな時間が刻まれていくのだろう。
こんなとき、東京の街が好きです。
胸の高まりにあわせて、街の騒音が、たったひとりの気まぐれなピアノの旋律にあわせて奏でられるオーケストラさながら、心に寄り添ってくれていました。
さっきは心細さを煽ってきた、よそよそしい街の音が、ちょっと心の変化があっただけで、こんなにも頼もしく響くなんて。
・・・いつもひとりで行動するのが好きなのも、根っからのシティガール(笑)だからであり、東京では孤独を感じなくて済むからなのでしょう。街に出れば、喜びも、悲しみも、街によって増幅され、昇華されていく感覚。さっきかけた電話の最後に「お祝いしなくちゃね」と、彼に伝えた言葉を、今度は、さっきとは違う、心からの言葉として自分に向かってつぶやいていました。
そうして、曲がり角にさしかかり、急な坂の歩道を登りかけた、そのときです。
突然に、笑いがこみあげてきました。「本当に、悪いことしたよね、仲介の不動産屋さんには。わ・る・い・こ・と・を・し・た・・・」
購入に至るまでの日々、とりわけ営業マンとのやりとりが、思い出されたのです。
もともと笑い上戸のクリスティーヌですが、笑い出すと、止まりません。すれ違う人に、顔じゅうくしゃくしゃにして笑っているところを見られて、おかしな人だと思われている、まずい、とは思うのですが、どうやって笑いを止めていいかわからないほど、こみあげるおかしさと、幸せな気持ちがごちゃまぜになって、抑えきれない状態になっていました。
みなさんには、「森ビルマンション購入記 」初回のラストで、クリスティーヌが営業マンに、あたかも電話の冒頭で、「買います」と伝えたというように書きました。ところが実際は、まったくそうではありませんでした。
こんな客、どこにもいないだろうなあ、よく、塩をまかれなかった。でも、本当によく、つきあってくださった。腹の底から突き上げてくる笑いにまみれながら、本当に、悪いことをした、悪いことをした、よく匙を投げなかったよね、あの営業マンは、と繰り返し思っていました。
・・・だって、普通、値切らないよね、土壇場になって。
「ほとんど、決まりました」
新築マンションの価格は、5746万円とか、4692万円とか、端数まできっちり提示されることはありますが、中古マンションの価格は、5780万円とか、4680万円とか、末尾が80で終わることが多いです。桁は違うんですが、スーパーで売られている大根98円、ブロッコリー198円や、安売りパジャマ3980円とかいうのと似ています。大根であっても、高額なマンションであっても、価格の数字に関する購入心理は、さほど変わりはないのでしょう、たしかに5020万円のマンションより、4980万円のマンションのほうが、5000万円を切ることで、不動産サイトでも検索しやすく、安く(笑)感じますよね。人の心理は、そうは高尚なものではありませんから、ある一定金額を超えると心理的なバリアが働くこと(5000万円以下のマンションを購入したい等)もあって、80という数字はたしかに有効なのかと思います。
「森ビルマンション」の価格も、そうした不動産業界の慣例に準じたのか、末尾は80でした。
そして今回は、おそらく最初の時点から「背伸びしていそうな」客だと思われたに違いありません、こちらの状況を何も伝えない前から、営業マンの方が、
「末尾の80万円は、値下げしてくれるように、自分から言っておきました」
と、おっしゃってくれたのです。しかも、
「すでに売主の方からの了承を、得ています」
と、完全に事後報告でした。
こちらから、価格については何もお願いしていないのに、「あらかじめ、売主とここまでなら下げてくれるだろう」という金額を、申し出てくれたなんて、なんというすばらしい営業マンだろうと、感動しきりでした。
同時に、売主の方がここまでなら下げるだろうと判断できるようなコミュニケーションを売主と欠かさず、さらに、少しでも取引が成立するように売主側に対しても交渉を辞さない才覚に、脱帽していました。
それなのに、です。
これ以上、いくらなんでも延ばせない、というその日・・・。
こちらからは、電話をしませんでした。したくても、できなかったのです。
ついに、携帯電話が、ブルブル震えました。
携帯の画面を見なくても、誰からかかってきたのかわかります。営業マンです。意を決して、携帯のボタンを押しました。
開口一番、口に出た言葉は、
「ほとんど、決まりました」
でした。ついさっきまで、脳裏をかすめもしなかった言葉でした。でも、ほかに言いようがなかったのです。ぶざま極まりない「土俵際のせめぎあい」で、最後まで迷っていたのでした。
「これ以上、売主の方に値下げをお願いするのは、無理です」
「ほとんど、と言いますと?」電話口の声が、珍しく、わずかに上ずって聞こえました。
「決めきれていない、ということでしょうか」
詰問調ではありません。単に、こちらの言葉を反芻し、あくまで確認している、といった風に、営業マンは聞いてきました。
こんなとき、不動産営業という仕事は、つくづく「人の心理」と向き合う仕事だなあ、と実感します。
不動産というモノを通じて、ありとあらゆる人間を相手にしなくてはいけない仕事。その分、人を見る目が養われるんだろうなあ、人間心理に長けてくるのだろうなあ、と、人ごとのように考えながら、半ばやけっぱちで、こう返事をするしかありませんでした。
「そうなんです」
ひえー、こんなやりとりは、完全に、クリスティーヌの信条に反しています。人からは「決断は早い」と思われている自分が、ここまで優柔不断な言動を取っていることがおそろしい。
携帯を握るクリスティーヌの隣には、「彼」がいました。エクセルを駆使し、今回のローンが自分たちの家計に与える長期的なインパクトを計算尽くした夫が・・・。
「わたしは決定してるんです。ただ、どうしても、彼が決定できなくて・・・」
正直に言いましたが、言い訳がましく聞こえてしまったかもしれません。あーあ、こんなのみっともないし、相手に悪い、買うのか買わないのか、スパッと決めたかったのに、と内心、気が気ではありません。
「なるほど」
あくまで落ち着いた口調で、営業マンは返してきました。
「決め手にかける理由は、なんでしょう」
「ええと、それは・・・」
言いにくい。でも、ここははっきり言わねば。
「あのう・・・、金額です」
「金額が、高いと?」
「・・・はい」
ああ、もう、消え入りたい。でも、それが現実。
「これ以上、売主の方に値下げをお願いするのは、無理です」
即答でした。
「そうですよね、わかります」
だって、もうすでに、80万円も下げてくれているんだから。
「いったい、いくら下がれば、決定できるんですか?」
聞かれて、ぐっと詰まってしまいました。
「お気持ちは、わかりました」
一呼吸置いて、クリスティーヌは金額を口にしました。
「○○万円です」
ほとんど(笑)、口から出まかせでした。たしかに、その値引きがあれば、納得できると思っていた金額でしたが、そこまで細かい金額を、夫と相談していたわけではありません。単に、自分の感覚でした。それに実際、「いくら値引きされれば買う」という話し合いをしていたわけではありませんでした。
なので、その○○万円という金額は、それまで漠然とクリスティーヌが、「そのぐらいの金額だったら嬉しいな」という、根拠のないものでしかありませんでした。
実は、この日を迎えるにあたり、クリスティーヌの判断は「買い」でした。
一方、夫は、クリスティーヌよりずっと慎重な性格で、「決めきれない」という状態でした。
大きな決めごとなので、納得するまで話し合いたい、でも、やはりどうしても「少し高い」という壁にぶちあたってしまうのです。それに対する営業マンの返答は、クリスティーヌが予想しないものでした。
「お気持ちは、わかりました」
「本当にすみません、土壇場になって・・・」
消え入りそうな声で、謝りました。こんなぶざまなていたらくでは、謝るしかありません。すると、
「その分、仲介手数料を値引きさせていただきます」
スパッと返ってきたのです。
「売主の方には、これ以上お願いする余地はありません。しかし自分としても、なんとか成約していただきたいと、がんばってまいりました。仲介手数料の値引きについては、明日、上司の了承を得ます。必ず得られると思いますので、これで、ご購入していただけますでしょうか」
「ありがとうございます!購入します!」
自分でもびっくりするぐらい、大きな声が出ました。さっきの消え入るような自分の声は、うそみたい。
あとは電話を切るだけ、でした。
あの人だったから、購入できた
電話を切った後。
購入することになった、と、夫に伝えました。
「すばらしく優秀な営業マンだよね、こんな決着のつけ方を、思いつくなんて」と興奮ぎみのクリスティーヌに、「でも上司の了承を得られるかどうかはわからない」と、夫はあくまで冷静です。
こんなとき、声が一オクターブ上がってしまう性格(笑)のクリスティーヌです。
「あの営業マンが、上司の了承を得られないはずがないでしょ! あんなに優秀な人、いないんだから。自分がやるって言ったことは、絶対にやる人なのよ!だから、ここまでわたしたちを待ってくれたし、辛抱強く接してくれた。売主の方にもいろいろ交渉してくれた。あの営業マンじゃなかったら、絶対に購入できなかった。だから、購入は決定! もう検討は終わり! もうずいぶんと検討したんだし、購入できることそのものが、すごいラッキーみたいな状況なんだから。だって、わたしたち、あそこに住みたいよね! あそこに住めたら、いいよね! 住みたいって、思ってるよね!」
電話を切る直前に大きな声でお礼を言った勢いのまま、マシンガンのように彼に言葉をぶつけました。こういうとき、喋りが止まらなくなってしまう自分の性格をこれまで幾度となく自覚してきました。でも、止まらないんです。「ありがたい」「本当にありがたい」「なんて優秀な営業マンなんだろう」と、感謝の気持ちしかありませんでした。
あの人が担当でなかったら、絶対に買えなかった。
あの人だから、買った。
いや、買えた。
「優秀な不動産営業マンとは」という問いに、いろいろな答えがあるとは思いますが、あの営業マンが「なぜ優秀か」と問われれば、クリスティーヌの答えは、たったひとつです。
「自分の責任の範囲でできることは、躊躇せず行う」
今回のことで、「優秀な営業マンの条件」とは何か、その方から教えられた気がしています。
(こうした手数料値引きが可能になったのは、この仲介が、売主からもお金をもらい、買主からもお金をもらう、いわゆる「両手仲介」であることを最後に付け加えておきます。)ひとしきりマシンガントークが収まった後、
「あ、もしかして、もっとたくさんの金額を言っていれば、もっと仲介料をおまけしてくれたかな」
と、ふと口にしたクリスティーヌに、彼は、
「それはない」
と、また冷静。
ま、どこのおうちでも、人さまには言えない内輪話があると思いますが、こんなすったもんだが、購入時、あったのでした。
ちなみに、クリスティーヌが口にした金額とは、わずか数万円の額ではありませんでした。ただ100万円には到達せず、なぜか末尾が「5」だったことが、自分でも不思議でなりません。人がとっさに口にする金額で、末尾が5万円って、どういう心理なんだろう・・・(笑)。
8では、無意識下で、あざとすぎたのかもしれません。
クリスティーヌの想い(と、おまけの話)
「どんなときも、理解しようとしてくれた」
「どんなときも、こちらの立場に立ってくれた」「この取引をまとめたい、という、強い気持ちを持ってくださっていた」
これらのすべてを備えた、「森ビルマンション」を仲介してくれた営業マンの方に、感謝しています。
もし「マンション購入アンケート」なるものがあり、「マンション購入の際、決定権を握るのは? 1夫 2妻 3必ず2人で決める」という質問があったとしたら、クリスティーヌ家では間違いなく「2」です。
みなさまの家では、いかがでしょう。
・・・さーて、ここまでぶっちゃけてしまったからには、もう恥ずかしいこともありません。また来週、どうか「森ビルマンション購入記」続きにおつきあいくださいませ。
ここまで読んでくださったお礼(?)に、ハンバーガーの写真を一枚(笑)。クリスティーヌがわりとよく行く「the 3rd Burger」です。
写真のハンバーガーは「the オーセンティックバーガー」(854円)です。少し前、虎ノ門で友人と会った際に撮影いたしました。
あちこちにお店がありますが、先日紹介した、「シティタワー虎ノ門」の近くにある「虎ノ門ヒルズレジデンシャルタワー」の地下にあるお店がおすすめです。お店のHPはこちら です。
「虎ノ門ヒルズ」といえば、こちらは、「シティタワー虎ノ門」から「虎ノ門ヒルズ」まで歩いた道のりをふくんだ「シティタワー虎ノ門」の紹介映像です。よろしかったらご覧ください。
元記事はこちらです。
「Weekendクリスティーヌ」は、クリスティーヌが不動産購入(売却)から感じたこと、日々の生活から発見したこと、失敗談から学んだこと、成長?したこと、などなど、機会あれば皆さまとシェアしたいと思っており、「だったら、週末がいいかなあ」と思った次第です。
あくまでクリスティーヌの体験談が中心になる予定であります。ちょっとした息抜きに、どうかおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。
この話の続きは、こちらです。
・・・皆さまのウィークエンドが、素敵な時間でありますように。住む場所は人生を豊かにする、がモットーの、クリスティーヌより愛をこめて。
(森ビルマンション購入記 記事一覧はこちらからどうぞ。初回はこちらです。)
(はじめまして、の自己紹介はこちらです)
(息抜き版、もうひとつの自己紹介はこちらです)
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