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『ここにもホテル!?』から始まった京都駅南の変化
京都駅八条口から東西へ延びる八条通は、この10年ほどでホテルが建ち並ぶ風景へと大きく変わった。
コロナ前、インバウンド需要の拡大とともに、京都駅南側ではホテル開発がいち早く進んだのが、この八条通沿いだった。
京都駅からのアクセスに優れ、昨年開業した「チームラボ 京都」へ向かう人の流れも生まれている。さらに、崇仁地区をはじめとする京都駅東南部エリアの再整備も進み、この一帯のポテンシャルは以前にも増して高まっている。

手前からヒルトン、マリオット、MIMARU、変なホテル、ダイワロイネットが建ち並ぶ八条通
注目を集める京都駅東南部エリアには向かわず、今回は堀川通を南へ歩いた。
見えてきたのは「OMO3京都東寺」(開業当初は別ブランドのホテル)
当時このホテルを初めて見た時、率直に思った。
「ここにもホテルが建つのか。」
訪日旅行者にとっては、この辺りもまだ京都駅エリアなのだろう。

コロナ前夜の2019年10月「ホテルWBF京都東寺」開業。間もなくコロナが直撃しWBFは2020年10月倒産。民事再生を申請し星野リゾートらが支援。
京都駅から歩いて行ける距離であり、世界遺産・東寺もある。
しかし、京都で暮らす私には、ここから先は京都駅とは少し違う街に映る。
住む人と訪れる人では、街の境界線が少し違うのかもしれない。

「OMO3京都東寺」の向かいには広大な更地が広がっている。ソシオネクスト京都事業所跡地。
そして十条通を越えると、その印象は一変する。
任天堂をはじめ、

巖本金属 京都工場、レンタカー店、京阪メタル……。幹線道路沿いには、ものづくりや車関連の企業が並び、そこへDVD鑑賞「金太郎」の看板も加わる。
京都駅周辺の観光地の空気は薄れ、「住む街」というより、「働く街」という表情が色濃くなっていく。

巖本金属 京都工場

京阪メタル

DVD鑑賞「金太郎」
さらに久世橋通を東へ歩く。
ラーメン藤本店の南側には、アリストンホテル京都十条が建つ。
「こんな場所にもホテルがあった」
コロナ前、インバウンドの熱狂は久世橋通まで到達していたことを改めて思い出した。

2018年開業「アリストンホテル京都十条」。久世橋通にホテルなんて理解不能だったが、外から見れば京都駅にも近く、伏見稲荷大社にも近い好立地に見えるのだろうか。
そして今回歩いてみると、今度は企業の新拠点やマンション計画が次々と現れる。
ホテルが南へ。
企業が南へ。
その流れを追うようにマンション計画も現れる。

油小路通西側の十条と久世橋の間に現れる敷地

(仮称)京都郵便処理施設 ・高さ37m ・7階建 京都中央郵便局の建替えと関係しているのだろうか
一見すると、それぞれ別々の動きに見える。
しかし街を歩いていると、それらは一本の線でつながっていることに気付く。
京都市はこのエリアを「京都駅南オフィス・ラボ誘導プロジェクト 京都サウスベクトル」と位置付け、企業や研究開発拠点の集積を進めている。
市民でも、この名称を知る人はまだ多くないだろう。
それでも街は、確かに南へ動いている。
「京都サウスベクトル」という名称は、まだこの都市の日常会話に十分には溶け込んでいない。
しかし、その輪郭だけは確かに存在している。

マンションではなく、企業が街を動かしている
京都市が掲げる「京都サウスベクトル」は、マンションを増やすためのプロジェクトではない。
目指しているのは、企業本社や研究開発拠点などの集積だ。
歩いていると、その動きが少しずつ見えてくる。
八条通では日本電気硝子とジェイアール東海が高さ約45mの複合ビルを計画。

河原町八条の交差点北西側、市営住宅地跡地に計画

高さ規制(31m)が緩和されたエリア。京都市内で私が初めて見た高さ42.6mという数字。
京都中央信用金庫は八条通と油小路通との交差点に建つワコール新京都ビルを取得した。


任天堂が本社開発棟の東南に新たな開発拠点を整備中。その高さ67.57m(塔屋を含まない)

本社第二開発棟(仮称)/京都市南区上鳥羽鉾立町11番地1 本社開発棟と本社の間に位置する。2029年3月予定
そのバリケードには「京都サウスベクトル」の看板も掲げられている。

さらに十条通では京西グループの第二本社開設プロジェクトが進み、ここにも「京都サウスベクトル」の看板が立つ。
点ではなく、線。
街を歩いて初めて、企業投資が南へ連続していることが実感できた。

医療機器や計測器などの修理、保守を手がける京西テクノス(東京都多摩市)は2026年秋をメドに京都市に「第2本社」を開設。
マンション市場はどう変わるのか
企業が集まれば、当然そこで働く人も集まる。
京都サウスベクトルを歩いて感じたのは、マンション供給がないわけではないということだ。
しかし、その中身を見ると、京都駅周辺とは少し様子が違っていた。
東九条周辺では、プレサンスコーポレーションの投資用分譲マンションが数多く供給されている。

地下鉄十条駅近くでは、日本ホールディングスによる10階建( 30.14m)・25戸のマンション計画が進む。

日本ホールディングス・東九条南河辺町・10階建・25戸・延床1190.71㎡ 1戸あたり35㎡前後 1LDK 2DKタイプか。
近鉄十条駅近くでは、TUKUYOMI HOLINGSによる10階建( 28.50m)・56戸のマンション計画も見られた。

ツクヨミホールディングス・伏見区竹田向代町・10階建・56戸・延床1894.62㎡ 1戸あたり25㎡前後 1K ワンルームタイプか。
いずれも投資用分譲マンションとみられ、このエリアでは実需向けファミリーマンションよりも、投資需要を意識した供給が目立つ。
一方で、地下鉄十条駅周辺には信和不動産の管理地も見られた。今後どのような活用がなされるのか注目したい。

油小路十条下る、油小路通沿い西側
京都駅南側、西九条を象徴するマンションとして挙げたいのが、2025年築の「ソルプレサンス京都 Station Residence」だ。
京都駅徒歩圏(徒歩7分)という立地に加え、イオンモールKYOTOも生活圏。歩いてみると、「京都駅南」という一括りでは語れない街になってきたことを実感する。

ソルプレサンス京都 Station Residence/TUKUYOMI HOLDINGS/プレサンス・京都市南区西九条春日町・JR東海道本線「京都」駅徒歩7分・7階建・32戸・築2025年1月・1LDK・2LDK・2LDK+S(納戸)・3LDK
対照的なのが、地下鉄十条駅近くに建つ2000年築の「パデシオン新烏丸十条」だ。
歩いてみると、こちらは今も工場や事業所が目立ち、「上鳥羽」の空気を色濃く残している。

パデシオン新烏丸十条・京都市南区上鳥羽勧進橋町・地下鉄「 十条」駅 徒歩5分・7階建・148戸・築2000年3月
同じ京都駅南でも、西九条と上鳥羽では街の性格もマンション市場もまったく異なる。
ソルプレサンス京都 Station Residenceとパデシオン新烏丸十条は、同じ土俵で比較できるマンションではない。
むしろ20年以上の時間を隔て、それぞれの時代の「京都駅南」を映し出している存在と言える。
しかし、歩いていて感じたのは、ファミリー向け分譲マンションの存在感の薄さだった。
それでも、九条、十条、上鳥羽エリアを歩くと、「パデシオン」の名を冠したマンションが今も数多く目に入る。
パデシオン十条駅前、パデシオン京都十条、パデシオン十条、パデシオン新烏丸十条――。2000年代前半、この一帯は京都を代表する地場デベロッパー・睦備建設がファミリー向け分譲マンションを次々と供給したエリアだった。

同社は「1㎡でも広く、1円でも安く」をモットーに、これまで京都を中心に7,600戸を超える住まいを供給してきた。
しかし、この九条・十条・上鳥羽エリアでは、あの頃のようなファミリー向け分譲マンションの新規供給は、この20年ほどほとんど見られない。
企業やホテル、大学への投資が相次ぐ一方で、「家族が住むための分譲マンション」という流れは、このエリアでは長く止まったままだ。
同社の代表は、「京都の住宅市場は大きく変化している。物件価格は高騰する一方で、働く人の収入は増えていない」と語り、住宅市場の変化に対応するため新たな事業への挑戦を掲げている。
実際、2022年に竣工した「パデシオン京都小倉グランドヒルズ」を最後に、新築分譲マンションの供給は確認されていない。
一方で近年は、戸建て分譲や売買仲介、リフォームなどへと事業の幅を広げている。
かつてこのエリアで数多くのファミリー向けマンションを供給したデベロッパーも、その後は他エリアでの供給へと軸足を移した。
歩いていて感じたのは、事業所や工場の存在感が強い一方で、「家族が暮らす街」という印象は京都市内の他エリアほど前面には出てこないということだ。
それも、このエリアで分譲マンション供給が続かなかった理由の一つなのかもしれない。

睦備建設 2025年2月撮影
これは一企業の経営判断にとどまらない。
京都サウスベクトルでは企業投資が活発に進み、街は確かに変化している。
一方で、建築費や土地価格の上昇を背景に、ファミリー向け分譲マンションを供給するハードルは以前にも増して高くなっている。
街は発展している。
しかし、その発展が「家族が住む街づくり」に直結しているわけではない。
京都サウスベクトルを歩きながら感じたのは、企業投資の勢いと住宅市場の現実との間にあるギャップだった。
京都サウスベクトルは、「マンションの街」を目指しているわけではない。
それでも企業が集まり、人が集まれば、新たな住宅需要は必ず生まれる。
その受け皿は賃貸なのか、投資用マンションなのか、それとも再びファミリー向け分譲マンションが供給される日が来るのか。
街を歩いて見えてきたのは、企業投資が進む京都と、住宅市場が直面する現実。
その二つが交差する場所が、京都サウスベクトルなのだと感じた。
スープの中の京都サウスベクトル
サウスベクトルを歩き続けたあと、ラーメン藤 本店に入る。

外の風景とは対照的に、そこには熱いスープと一杯のラーメンがあるだけだ。

さっきまで考えていた企業やマンション、市場の話も、一度頭の中から離れていく。
湯気を眺めながら、ふと思った。
京都サウスベクトルで見てきた街も、この一杯のラーメンと少し似ているのではないか、と。
スープ、麺、チャーシュー、ネギ。
それぞれは別々の存在だが、どれか一つ欠けても、この一杯は完成しない。

街も同じだ。
任天堂があり、ニデックがあり、京セラがあり、ロームがあり、GSユアサがあり、村田製作所がある。
さらに堀場製作所、オムロン、イシダ、そしてGLM。
それぞれ違う役割を持ちながら、一つの街を支えている。
そして、その企業で働く人が集まり、暮らしが生まれ、住宅が必要になる。
歩いてきたマンション計画も、その流れの一部なのだろう。
もちろん、京都だけですべてが完結するわけではない。
それでも、この街を歩いていると、京都には未来のものづくりを支える部品が、少しずつ集まり始めているように見える。
企業が集まり、街が変わる。
その変化に合わせて、マンション市場も少しずつ姿を変えていく。
店を出ると、さっきまでと同じ京都の景色が広がっていた。
けれど、その景色はもう少しだけ違って見えた。
まだ多くの人は気づいていないかもしれない。
それでも京都サウスベクトルは、静かに動き始めている。
そして、その変化は、これからの京都駅南のマンション市場にも少しずつ表れてくるのではないだろうか。

おわり


























京都駅から南側ってなかなか訪問することないんですよね。そもそも京都駅に行かないからなぁ。企業が立ち並ぶ感じでしょうか。ラーメン藤、美味しそうですね。京都では有名店なのでしょうか。ところでラーメンにビールってお腹ふくれませんか?
普通に生活していたら京都駅の南にはなかなか縁はないですよね。
ラーメン藤 本店は1972年創業の京都を代表するラーメン店の一つです。
男性はビールを飲むとさらにラーメンを食べたくなるのです。